浅草に戻ってきて、新しい友達も増えてきました。
その中の一人で時々お酒を飲んだりしている、写真家の多田裕美子さん。
私と同じ歳で、まわりでは多田姐(ねえ)と呼ばれています。
彼女は中高と女子校に進み、大学では仏哲学を専攻。
卒業後、広告代理店に就職予定だったのが、直前で辞めてフリーカメラマンに。
その後、雑誌や広告の仕事をしていたのですが、
10年程前、山谷のおじさん達を撮った作品が、今回の「玉姫写真館」。
どのおじさんの表情もとっても良くて、見ているこちらが圧倒される
ポートレイトが並んでいます。
いつも飲んだくれている多田さんのすごい一面を見て私はびっくりしたのでした。
多田さんのご両親は、以前、山谷で食堂を営んでいたのですが、
子ども達はそのことを黙っていなさいと言われていたとか。
山谷という場所は、ご存知のとおり、日雇い労働者が集まっている地域で、
路上生活をしている人も少なくない。
私も浅草で生まれ育っていますが、めったに近づかなかったし、
自分とは関係のない所でした。
多田さんにとっても、近くて遠い山谷でしたが、
カメラマンになってある時、店の手伝いをしているときに、
お客さんにカメラを向けて、すごく怒られたことがあるそうです。
ところがある日、その中の一人のおじさんが、写真を大事に持っていて、
喜んでくれる人もいるんだ、このおじさん達を撮ってみたい、と思ったのだとか。
そこで玉姫公園でおじさん達を撮り始めると、多田さんの手伝いをしてくれるおじさん達で
‘チーム裕美子’まで結成され(笑)、屋外写真館が山谷の町に現れることとなります。
そんな話を、編集者の都築響一さんがメールマガジン「ROADSIDERS」で取り上げたところ、
多くの反響を呼びました。
先週末には、都築さんをゲストに招いてのトークショウが行われ、大盛況となったのでした。
私は福岡アジア美術館での展示を終え、その後、引っ越し作業を終えて
東京に戻ったその足で会場に駆け付け、僭越ながらも司会をさせていただきました。
「玉姫写真館」は、7月8日(日)まで開催中。
場所は浅草のカフェ&バー「鈴楼」です。
http://www.meeko-meeko.com