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手でつくるということ
手でつくるということ

先日、打合せの際に早坂伊織さんがおっしゃっていたことに「なるほど」と膝を打ちました。
「機械織りと違って人間の手で織った反物は、どんなに上級者が織っても100%均一にはできない。必ず“ひずみ”は生まれる。
そして人間の脳は、ひずみのある生地を肌に当てる方が心地いいと感じる。なぜなら人間の体は当然ながら凹凸があって均一ではないから。」
何年か前の和装人インタビューで、染めの二葉苑・小林元文さんも
「昔の江戸小紋を見ると、今だったら不上がりになるくらい型がズレている。ところがミリ単位で正確さを求める今の時代は、そういったズレは商品にならない。味わいよりも完璧度を求めますから。」と話しています。

微妙なひずみやズレを“心地よさ”“味わい”と捉えられる感覚を、私たちはどんどん失っているのかもしれません。
衣食住すべてに関して手づくりで、規制品や工業製品なしには生きていくのは難しい。でも大量生産、大量消費の時代は終わり、世の中の流れが変わってきているのは確かです。

“住”ですべてオーダーメイドとなると結構な金額になるのでしょうが、“食”に関しては、キャベツや大根に「〇〇町の△△さんが作りました」と表記された、作り手の顔が見える商品が人気だったりします。
そして“衣”の手でつくる製品といえばまさに着物。手織りの着物はやはり高価ですが、着る人がもっと増えて需要が高まれば、作り手も増えて価格も抑えられていくと思うのです。

同じようなことが履物でもいえます。
草履はコルク芯に革や布地を貼って仕立てます。畳表の雪駄は竹の子の皮を編んで、底に革を貼ります。
下駄はいうまでもなく木製。和装履物は、天然素材で作られている製品です(そうでないものもありますが)。

さらに、鼻緒を一足一足、職人が手で挿げます。履く人の足の大きさ、形、クセに合わせて、人の手だからこそ、微妙な調整ができるのです。
鼻緒を機械で付けている履物とは、当然ながら履いた時、歩いた時の心地よさは比べようがありません。

「手織りの着物は、着てみないとその良さがわからない」という早坂さんの言葉と同じように、「職人が手で挿げた履物は、履いてみないとその良さがわからない。」
昔は日本中にあった履物屋さんがどんどん減っている現状で、消費者が職人の挿げた履物の良さを知る機会がなくなれば、その価値は伝えられなくなっていきます。

私たち辻屋本店は、「職人の挿げる天然素材の和装履物」について少しずつでも、知ってもらい、伝えていきたいと思います。

12月21日(土)開催の「あさくさ和装塾」では、気が遠くなるほどの時間と手間をかけた織物の最高峰、結城紬のお話です。
真綿から手でつむぎ、地機で織った反物は、重さを感じないくらいの着心地だそうです。
そしてもちろん、結城紬に合わせた特選履物もご紹介します。
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by TomitaRie | 2013-11-27 16:01 | 下駄・草履・和装のこと


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