最近、各所で何人かの経営者に興味深いお話を聞く機会がありました。 「サイゼリヤ」創業者、現会長の正垣泰彦さん。 「人間のからだは細胞からできている。遡れば分子レベルになり、さらには電子レベルに、そして波動に、最後はエネルギーとなる。 いちばんの元であるエネルギーの特徴は、調和し良くなる方向へ変化すること。エネルギーは孤立しない。もしあなたに苦しみがあるのであれば、それは迷いがあるからで、エネルギーに逆らわず、誰かの役に立つために動けばよいのだ」 「動機善なりや、私心なかりしか」京セラの創業者、稲盛和夫氏の言葉を思い出しました。 サイゼリヤは現在1400店舗を超えたそうです。「正確に何店舗あるのか知らない」とおっしゃってました。「お年寄りから子供まで、家族や友人といろいろ話しながら食事を楽しむために店はある。財布の中身を気にしないで、おいしく食べれば、自分の本心を家族や友人に話すことができるようになる。」 企業の規模は大きくなっても、この理念が行き渡っているのであれば、本当にすごいことだと思います。 水道橋の「庭のホテル」にて、「竺仙」五代目当主、小川文男さんと、きものファッションコーディネーターとして草分け的存在である江木良彦さんとのトークイベントがありました。「伊右衛門」のCMや「ヨルタモリ」での宮沢りえさんのスタイリングで話題の江木さんのことは、また次の機会に書くこととします。 「竺仙」は創業172年の江戸小紋、浴衣を中心とした呉服屋。初代の俳号が竺仙だったとか。 今や有名百貨店や高級呉服店でも引っ張りだこ、竺仙の浴衣は和装好きの憧れですが、戦後は浅草に店を構えていたそうです。 小川社長のお話。「自分の代になるまでは、相当な苦労もあった。ここまで続いてきたのは、妥協しないものづくり。大きく儲けないでやってきたこと。自分の店だけ良ければいいとは考えなかったこと」 安価なプリントの浴衣が大量に売られている今、時間もコストもかかる職人の手仕事にこだわりつつも、時代に添った商品を作り、ブランドを確立している竺仙。 高レベルの技を持つ職人を抱えるのは、どれほど大変か。竺仙の職人さんには若い人も多いそうです。 いかに安く多くの人々に提供するか、というサイゼリヤとは真逆ですが、どちらもものすごい企業努力をされているということでしょう。 浅草のすき焼き専門店「ちんや」六代目、住吉史彦さん。 先日、住吉さんと茨城の「磯蔵酒造」五代目、磯貴大さんのトークイベントがありました。 ちんやは創業138年、磯蔵酒造も創業150年の老舗です。「適サシ肉」「ライスィな酒」についての熱いトークは大変おもしろかったのですが、ここでは住吉さんのブログから抜粋。 「…なのに日本人はムードに流されます。日本人の集団志向・絆の強さは、災害時には良い方向に作用しますが、同時に日本という国は、その集団志向による失敗をし易い国であって、平時や景気良さげなムードの時には特に気をつけないといけません。 逆に生き残った老舗はこれまで、そういう失敗から身を守って来ました。平時の老舗の姿勢の根本は懐疑主義あるいはバランス感覚であるべきだと私は考えています。 災害時に地震の揺れや津波は建物を破壊しますが、それは本当の資産ではありません。日本人が本当の資産であるソフトウエアとお客様との関係を大切にし続ければ、これからも残って行く企業はあると思います。 反対に、浮ついたムードは人の心を壊します。 地震は人の心を壊せません。津波も人の心を壊せません。火山も、台風も、戦争も人の心を壊せません。なのに、それらが壊せなかった人の心を、いっときの利益の為に失ったらかなり悲しいと私は今深く心配しています。」 浅草の花街で長く続いた料亭がまた一軒、姿を消しました。跡にはマンションが建つそうです。料亭は日本文化の集積といってもよい存在です。 料亭一軒なくなることが、浅草の花柳界にとって、街の歴史にとって、日本文化にとって、どれほどの痛手か、まったく意に介さない不動産投資。 7年前に辻屋本店を継いだ際、なぜ商売を続けるのか、なぜ履物専門店が必要なのか、何度も何度も考えました。 100年を超える老舗で、お金儲けだけが目的という経営者はいないのではないか。世間様から喜ばれ、必要とされる存在でありたいからこそ、辛いときも逃げずに歯を食いしばって持ちこたえ、次世代につないできたのです。 目先の経済効果しか考えない経営、 自分の会社、店の利益しか考えない経営、 経営者の私利私欲のための経営、 これらは決して長くは続かない。 あらためて、いろいろ考えさせられた1週間でした。
by TomitaRie
| 2018-06-26 16:59
| 下駄・草履・和装のこと
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浅草辻屋本店 下駄屋.jp
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