カテゴリ:下駄・草履・和装のこと( 251 )
『浅草でそろう江戸着物』

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ようやく本が出来上がりました!
今日、晶文社の編集者さんと営業さんが見本誌を持ってきてくださいました。

浅草は江戸好みの着物、日常の和装がすべてそろう街。
着物だけでなく簪、帯締など小物や下着まで、和装まわりのお店24軒、富田里枝がご紹介しています。
履物に関するQ&Aもあります!
書店に並ぶのは来週になるそうですが、AMAZONで予約注文できますので、ぜひポチっとご購入いただければ嬉しいです!





偶然にも今日は観音様のご縁日で、金龍の舞が青空の下、荘厳なお姿を見せてくださいました。
良い前兆!と嬉しく思ったしだいでございます。

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by TomitaRie | 2018-10-18 17:50 | 下駄・草履・和装のこと | Comments(0)
着物のルールと伝統
街中で突然、着物の着方が間違っていると指摘する「着物警察」と呼ばれる人々(主に中高年女性らしい)がネット上で話題になっています。
私は遭遇したことがありませんが、着物初心者の中には自分の着姿やコーディネートに自信が持てず、着物を楽しめなくなってしまう人たちもいるようです。
先日ご来店されたお客さまが「歌舞伎座へ行くのに紬はダメなんですよね」とおっしゃるので、びっくりしました。
誰がそんなこと言っているのですか?と聞くと「ネットに書いてありました。紬は労働着だから歌舞伎観劇には向かないって。」
着物は季節や格によって決まりごとがあるから、間違えないようにインターネットで調べるというかたは多いと思います。
でも手軽に得られるネット上の情報がすべて正しいとは限りません。

紬は格が低いとされるのは、農家でくず繭を自分たち用に織ったのが紬の始まりという理由。
しかしながら、それはずっと昔の話です。
そもそも歌舞伎は大衆芸能なのに、なぜ紬はダメなのでしょう。意味がわかりません。
『きもの文化と日本』という本を興味深く読みました。「きものやまと」の社長である矢嶋孝敏さんと経済学者の伊藤元重さんの対談形式になっています。
その中で矢嶋さんが「昔は、染めの着物は値段が高くて上流階級しか着ることができず、庶民は織りの着物だったため、染めは織りより格上となったのだろうけれど、いずれにせよ過去の話」とあります。
着物のルールを書いた本にはたいてい、結婚式に紬を着てはいけないと書いてありますが、着物スタイリストの石田節子さんは結婚式にも紬を着て行きますとおっしゃっていました。
吉祥柄の帯や小物を合わせたり、お祝いの気持ちを表す装いなら、構わないかもしれません。

着物の店を銀座に持っていたこともある作家の白洲正子さんは、お嬢さんの結婚式にお気に入りの作家に染めてもらった梅の柄の御召しに金の帯を合わせて出席したと、お嬢さんが本で書いています。
白洲正子さんだからできることであって、新婦の母親が黒留袖以外を着るのはなかなか勇気が要ると思いますが…。
とはいえ伝統とかルールとか思い込んでいることが、実は近代になってからの決まり事だったりするのです。

「いまの着物のルールなんて、たかだかこの40年ぐらいのもの」と矢嶋さんは指摘されています。
たとえば江戸時代半ばまでは帯の結び目は前や横にあったりしたのが、世の中が平和になると今のように太い帯になり、後ろで結ぶようになりました。
お太鼓結びが登場したのは江戸末期。辰巳芸者が亀戸天神の太鼓橋に似せて結んだのが始まりといわれます。
従来の丸帯は重くて結びづらいので大正7年に袋帯が生まれます。名古屋帯が考案されたのが大正3年なので、袋帯のほうが後なのですね。

さらに驚くのは、訪問着は大正4年に三越百貨店が発明したのだそうです。
フォーマルでもなくカジュアルにも寄り過ぎない着物。
欧米で上流階級が外出するときに着るビジティングドレスを直訳したものとか。
とすれば一般庶民に必要なのか、どこへ誰を訪問するの?という疑問が出てきますが、要はワンランク上の生活を夢見る提案なのではないかと。

着物の入門書には必ず、留袖、訪問着、付下げ…と着物の格について載っていますが「あんな序列は、きもの業界の策略に近い」と矢嶋さんはばっさり。
周りに不快感や違和感を与えるのも困りますが、いまのルールは絶対ではないということを頭の隅に置いておけば、間違いを怖がらずに着物を楽しめるのではないかしら。
紬で歌舞伎座、まったく問題ないですよ!

10月歌舞伎座、11月平成中村座(浅草です!)は十八世中村勘三郎七回忌追善公演 です。
中村屋ファンの皆さま、こちらの鼻緒をお好きな草履に挿げて、歌舞伎観劇はいかがでしょうか。
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by TomitaRie | 2018-10-03 18:31 | 下駄・草履・和装のこと | Comments(0)
平野恵理子さんの個展、乙女文楽、祖母の単衣

お彼岸の連休で賑わう浅草を抜け出し、松陰神社前で開催中の平野恵理子さんの個展にうかがいました。

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二十四節気を短冊に描いた作品展です。
季節や行事と日々の暮らしを大切にする恵理子さんの世界観、是非ご覧ください。

「Gallery and Wonder」
https://www.facebook.com/sieguel/

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その後、友人にお誘いいただき、乙女文楽の観劇。
50周年の記念公演です。

通常、文楽の人形は三人遣いですが、こちらは一人遣い。
そもそも始まりは一人だったそうです。とても自然でリアルな表現と思いました。
女流義太夫もいいものだなぁとあらためて感じ入りました!

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この日着ていたのは、葡萄色の無地の紬。
合わせたのは薄手の軽い名古屋帯。
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足元は鎌倉塗の舟形下駄。矢絣の鼻緒です。
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この単衣の紬、祖母がかなり晩年に誂えたと思われ、一度も袖を通していないようですが、
身幅が広すぎて着づらいのです。
手持ちの着物はほとんど祖母か母のだったり、知人にいただいたもので、サイズが合わない着物は慣れているものの、これはかなり大変でした。
しかも、仕事しやすいように元禄袖になっている…。
袖丈があう襦袢はないので、いさぎよくレース袖の半襦袢にしてしまいました。
汗ばむ陽気だったのでちょうどよかったかも。
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おかしいかなぁとちょっぴり不安になり、いつもお世話になっているたぬき通りの呉服屋「ほてい屋」のおかみさんに見せに行ったら、
「紬なんだから、いいのよー! 商売してるんだし」と言ってもらえて安心。


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by TomitaRie | 2018-09-24 14:18 | 下駄・草履・和装のこと | Comments(0)
草履の修理
辻屋本店では自店の商品、他店の商品にかかわらず、可能な修理は受付けています。
鼻緒の交換、前坪の交換、底裏の剥がれ直しなどがあります。
思い出がある草履を大切にする気持ちにお応えしたい、そして挿げ職人の技があることを知っていただきたいと思うからこそ、
修理代金を低く設定しつつ、よそさまの草履も引き受けております。


先日も、大きなスーツケースいっぱいの草履を持ち込まれたお客様がいらっしゃいました。
踵の交換と、緩んだ鼻緒の調整です。
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このお客様は足が小さく、鼻緒をかなりきつく挿げるため、一足一足、鼻緒の「根留め」という作業をやり直さねばならず、新しい草履に鼻緒を挿げるよりも大変です。
他の場合でも、修理にはかなり手間と時間がかかることが多いのです。
かける時間と技術を考えれば、修理代はかなり良心的に設定しています。
面倒な作業をやってくれるうちの職人には、心からありがたく思います。


歩きやすい、疲れない草履というのは、草履の素材やデザインも影響しますが、ほとんどは「挿げかた」による部分が大きいのです。
挿げ職人はいまや絶滅危惧種といってもいいほど少なくなり、目の前で草履を挿げてもらったことがない人がほとんどと言っても過言ではない状況です。
それゆえ鼻緒を挿げる技術が評価されないのでしょう。
呉服屋さんのような着物のプロでも、最近は鼻緒を挿げなくてよいタイプの草履を履いているかたが多いのは、本当に残念なことです。


「痛くて履きづらいのは、草履のせいではなく、鼻緒の挿げかたのせいです。」
一日に何度も、お客様に説明しています。
一度でも辻屋本店で草履をお求めくださったお客さまは「辻屋さんの草履はほんとうに履きやすい」と言ってくださいます。
挿げかたは、各店によって違います。職人によってもそれぞれです。
草履の履き心地は、挿げる技のレベルによるわけです。
辻屋本店の職人は、創業より107年の歴史の中で、
代々受け継がれてきた高度な技術を持っていると自負しております。



写真の大量の修理を持ち込まれたお客さまは、この3倍くらい草履をお持ちとのことですが(笑)、
とても大切にされていることが草履を見るとわかります。履き終わったら乾拭きして、踵が減っているかチェックしてからしまっているそうです。
時々、ドロドロの草履を修理に持ってくるかたもいらっしゃいますが、せめて泥や汚れは落としてから持ってきていただけると、ありがたいです。

また草履はたいてい、台と鼻緒は同じ革で仕立ててあるので、元々付いていた鼻緒以外は合わない場合も少なくありません。
当店の在庫で、持ち込まれた台に似合う鼻緒があれば、もちろんその場ですぐに替えて差し上げるのですが、あれこれ合わせてみてもどうしても似合う鼻緒がない場合は、お断りすることもあります。
「鼻緒なんか、なんでもいいわよ、履けさえすれば。どうせ見えないんだから」というかたも時々いらっしゃいます。
そんなことは絶対にありません。
草履はコーディネートの重要なポイントです。
商売だけでいえば、台に似合わなくても適当な鼻緒を挿げれば修理代はいただけるのですが、うちで修理した草履がみっともない一足になるのはどうしても嫌なのです。


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by TomitaRie | 2018-08-21 16:33 | 下駄・草履・和装のこと | Comments(0)
ZOZOSUITから着物について考えてみた
話題のZOZOSUIT、おもしろいなぁ。
「人が服に合わせる時代から、服が人に合わせる時代へ。」
がコンセプト。
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採寸用の計測スーツを着てスマホの前で360度回ると、専用アプリが計測スーツのマーカーを認識して、自分の体のサイズが自動的にスキャンされ、計測したデータで自分サイズの服をオーダーできるというもの。
現在の展開ではビジネススーツ、オックスフォードシャツ、デニムパンツ、Tシャツを作れるみたい。
うちの若手職人がキャンペーン期間中に試しに注文して、実際に採寸してみたそうです。自撮り用にスマホを立てるキットまで付いてくるとか。
ネットで調べると使い勝手について評価はさまざまのようですが、始まったばかりなので今後まだまだ進化していくのでしょうね。

洋服が立体的に裁断されているのに対し、着物は直線で裁断して直線に縫っています。
洋服はいろんなデザインがあるけれど、ボタンやファスナーの位置は決まっているし、ジャケットでもズボンでも体の形に合わせて作られているから、着方は1通りしかありません。
誰が着ても同じ着方になる。


一方、着物の形は基本的にすべて同じ。男女もほとんど変わらない。
体に合わせて作られていないので、着方は着る人の自由です。
衿の合わせ方、裾の長さ、おはしょりの出し方、帯の位置など、着る人の体型や好み、その日の気分など自由に着こなせます。
まさに「服が人に合わせる」のが着物。


私の母が若い頃は、洋服を自分で縫うことが珍しくなかったと聞きますが、その後大量生産の時代になると洋服は作るものから買うものになり、やがてグローバル企業によるファストファッションが台頭します。
その次にくるのがIT化による自分サイズの洋服だとしたら…。


洋服とは真逆の着物が、別の視点から見直されてもおかしくないのでは?と思いました。
着物は「着方が難しい」「面倒くさい」「窮屈で疲れる」などの印象が根強いようですが、体に巻き付けて紐を締めるだけなのだから、何も難しいことはないのです。
私は毎日着ているせいか、洋服よりコーディネートがずっと易しいと思う。
アクセサリーも要らないし。
ゆったりでもきっちりでも、好きなように着られるのだから、洋服よりよほどラク。
着物に対する思い込みを手放せば、むしろ体にとても快適なのが着物であると思います。


ZOZOSUITは靴用に足の採寸もできるよう研究中ということです(もうできたのかな?)。
足全体を覆う構造である靴と違い、下駄や草履など和装履物は鼻緒だけで足にフィットさせます。
つまり着物と同じく、鼻緒の挿げかたで、どんな形の足にも自由に合わせられるのです。
逆に言えば、履き心地という点では鼻緒の挿げかたがもっとも重要ということ。
洋服と同じく靴は自分の足に合う一足を探さなければなりませんが、履物は自分の足に合うように鼻緒を自由に調整できる。
洋服と着物、靴と履物。
こうして比較してみると、180度視点が違うのがひじょうにおもしろいと思いませんか。


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by TomitaRie | 2018-08-08 18:06 | 下駄・草履・和装のこと | Comments(0)
夏着物で食事会
蒲田の呉服店「丸屋」の女将、谷加奈子さんにお誘いいただき、
「着物でスパニッシュナイト」という集まりに参加しました。
年齢、職業さまざまな女性たち、初対面のかたがほとんどでしたが、
暑さも忘れ楽しい夜を過ごしました。

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ドレスコードは夏着物だったので、私は大きな格子柄の紗の着物に羅の帯。
この帯は祖母が残したものです。
`大奥さん’と呼ばれ店を仕切っていた祖母は、
優しいおばあちゃんというより、ちょっと怖い存在だったのですが、
こんな可愛い帯を持っていたなんて、意外な面を知ったような気がします。

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いつも下駄が多い私ですが、少々気合を入れてお出掛け用の本パナマ草履で。
年々、価格が上がるパナマ草履ですが、やっぱりステキですよね。

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集まった女性たちは年齢も職業もさまざま。
着物歴はまだ浅いです、とおっしゃるかたのほうが多かったのですが、
帯合わせも小物づかいも、皆さんバッチリ。

以前、何かで女優の岸恵子さんが
「洋服のお洒落が上手な人は、着物でもお洒落。でもその逆はあまりない」
というようなことを書いていらした記憶があります。
これ、そのとおりだと思うのです。

着物関連のプロの人々は「和装はファッション」という意識が薄いような気がします。
一般的には洋服よりずっと高価な着物は、着る人にしてみれば洋服以上に自分を魅力的に見せたい。
ひと昔前のように、着物は箪笥の中に入れておくためのものではありません。
作る側、売る側が、もっとお洒落の感度を上げていかないと、着る人のレベルについていけません。
なのに、いまだに着物業界の中には、うんちくばかり語る人も少なくありません。

履物も、着物姿がより素敵に、お洒落に見えるように、
こちら側がつねにブラッシュアップしなければならないなと、自戒を込めて書きました。


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by TomitaRie | 2018-07-11 14:35 | 下駄・草履・和装のこと | Comments(0)
何のために続けるか
最近、各所で何人かの経営者に興味深いお話を聞く機会がありました。


「サイゼリヤ」創業者、現会長の正垣泰彦さん。

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「人間のからだは細胞からできている。遡れば分子レベルになり、さらには電子レベルに、そして波動に、最後はエネルギーとなる。
いちばんの元であるエネルギーの特徴は、調和し良くなる方向へ変化すること。エネルギーは孤立しない。もしあなたに苦しみがあるのであれば、それは迷いがあるからで、エネルギーに逆らわず、誰かの役に立つために動けばよいのだ」

「動機善なりや、私心なかりしか」京セラの創業者、稲盛和夫氏の言葉を思い出しました。

サイゼリヤは現在1400店舗を超えたそうです。「正確に何店舗あるのか知らない」とおっしゃってました。「お年寄りから子供まで、家族や友人といろいろ話しながら食事を楽しむために店はある。財布の中身を気にしないで、おいしく食べれば、自分の本心を家族や友人に話すことができるようになる。」
企業の規模は大きくなっても、この理念が行き渡っているのであれば、本当にすごいことだと思います。




水道橋の「庭のホテル」にて、「竺仙」五代目当主、小川文男さんと、きものファッションコーディネーターとして草分け的存在である江木良彦さんとのトークイベントがありました。「伊右衛門」のCMや「ヨルタモリ」での宮沢りえさんのスタイリングで話題の江木さんのことは、また次の機会に書くこととします。
「竺仙」は創業172年の江戸小紋、浴衣を中心とした呉服屋。初代の俳号が竺仙だったとか。
今や有名百貨店や高級呉服店でも引っ張りだこ、竺仙の浴衣は和装好きの憧れですが、戦後は浅草に店を構えていたそうです。

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小川社長のお話。「自分の代になるまでは、相当な苦労もあった。ここまで続いてきたのは、妥協しないものづくり。大きく儲けないでやってきたこと。自分の店だけ良ければいいとは考えなかったこと」
安価なプリントの浴衣が大量に売られている今、時間もコストもかかる職人の手仕事にこだわりつつも、時代に添った商品を作り、ブランドを確立している竺仙。
高レベルの技を持つ職人を抱えるのは、どれほど大変か。竺仙の職人さんには若い人も多いそうです。
いかに安く多くの人々に提供するか、というサイゼリヤとは真逆ですが、どちらもものすごい企業努力をされているということでしょう。


浅草のすき焼き専門店「ちんや」六代目、住吉史彦さん。
先日、住吉さんと茨城の「磯蔵酒造」五代目、磯貴大さんのトークイベントがありました。

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ちんやは創業138年、磯蔵酒造も創業150年の老舗です。「適サシ肉」「ライスィな酒」についての熱いトークは大変おもしろかったのですが、ここでは住吉さんのブログから抜粋。
「…なのに日本人はムードに流されます。日本人の集団志向・絆の強さは、災害時には良い方向に作用しますが、同時に日本という国は、その集団志向による失敗をし易い国であって、平時や景気良さげなムードの時には特に気をつけないといけません。
逆に生き残った老舗はこれまで、そういう失敗から身を守って来ました。平時の老舗の姿勢の根本は懐疑主義あるいはバランス感覚であるべきだと私は考えています。
災害時に地震の揺れや津波は建物を破壊しますが、それは本当の資産ではありません。日本人が本当の資産であるソフトウエアとお客様との関係を大切にし続ければ、これからも残って行く企業はあると思います。
反対に、浮ついたムードは人の心を壊します。
地震は人の心を壊せません。津波も人の心を壊せません。火山も、台風も、戦争も人の心を壊せません。なのに、それらが壊せなかった人の心を、いっときの利益の為に失ったらかなり悲しいと私は今深く心配しています。」

浅草の花街で長く続いた料亭がまた一軒、姿を消しました。跡にはマンションが建つそうです。料亭は日本文化の集積といってもよい存在です。
料亭一軒なくなることが、浅草の花柳界にとって、街の歴史にとって、日本文化にとって、どれほどの痛手か、まったく意に介さない不動産投資。

7年前に辻屋本店を継いだ際、なぜ商売を続けるのか、なぜ履物専門店が必要なのか、何度も何度も考えました。
100年を超える老舗で、お金儲けだけが目的という経営者はいないのではないか。世間様から喜ばれ、必要とされる存在でありたいからこそ、辛いときも逃げずに歯を食いしばって持ちこたえ、次世代につないできたのです。


目先の経済効果しか考えない経営、
自分の会社、店の利益しか考えない経営、
経営者の私利私欲のための経営、
これらは決して長くは続かない。


あらためて、いろいろ考えさせられた1週間でした。

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by TomitaRie | 2018-06-26 16:59 | 下駄・草履・和装のこと | Comments(0)
第一回 浅草ブラボー!
浅草の呉服店「はんなり」と辻屋本店のコラボイベント第二弾、
「ジャクソン・ポロックを帯にせよ」無事終了いたしました!

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気鋭の染色作家、仁平幸春氏をゲストにお招きし
「はんなり」社長、中瀬さんとの熱いトークを展開、
私は司会進行をつとめさせていただきました。

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「着物は心にズキュン!と響くものでなければ」という中瀬さん。
呉服業界全体が沈んでいる時代、売り手側は無難でありきたりな
着物や帯ばかり作ってしまうのが現状だけれど、
それでは着る側が買いたいと思えない。
営業テクニックで売っているのは、もう限界がある…
などなど、かなり呉服業界の裏側にも踏み込んだ内容でした。

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一方、仁平さんは元々は料理人だった経歴ですが、
料理と染色はかなり近いとおっしゃっていました。
持ち込まれる相談は、ずいぶん無理難題も少なくないそうですが、
それをこなしてしまう実力と感覚に、中瀬さんも絶大な信頼を置いているようです。

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お二人の共通する考えはこういうことだと思います。
着物を着る人もさまざまだけれど、今や趣味や生き方も多岐にわたり、
歌舞伎や文楽を観る、旅行をする、コンサートに行く、絵画鑑賞する、グルメなど、
いろんな選択肢のひとつに、和装でおしゃれすることがあり、
作る側も売る側も、そういったことに並んで選ばれることを意識しなければならない。

うちは履物屋ですが、とても刺激的で共感することがたくさんありました。
商品をただずらりと並べていても、魅力がなければそっぽを向かれてしまう時代。
私が四代目を継いで5年、先代のやり方とはかなり変えてきました。
単に問屋から仕入れた商品を売るだけではなく、
「これはいい!」と自分たちが自信を持っておすすめできる商品をセレクトし、
お客様それぞれの着物コーディネートがより素敵になるような一足をご提供する。
辻屋本店ならではの、個性を持った草履や下駄をメーカーといっしょに作っていく。
こういったことを心がけてやってきましたし、これからも続けてまいりたいと思います。

私の装い。
この日は涼しかったのですが、竺仙の長板中形を初おろし。
毎年、夏になると竺仙の浴衣にうちの下駄をコーディネートさせていただくことが
多々あるのですが、自分では持っていなかったので、
今年の展示会で思い切って自分用に求めました。
ずっと憧れていた長板中形ですが、しばらくは藍が落ちるということなので、
帯はリサイクルで見つけた破格のもの。
履物は新入荷の三味角舟形です。
鼻緒は八重山の織り生地を仕立てたオリジナル。
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by TomitaRie | 2018-06-19 12:31 | 下駄・草履・和装のこと | Comments(0)
着物で迎賓館を見学
先日、着物好きのお仲間と、迎賓館赤坂離宮を見学してまいりました。
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11時の集合でしたがすでに入り口には長い列。私たちは予約していったのでそれほど待たずに入れました。
迎賓館はかつて紀州徳川家の江戸中屋敷があった場所に、東宮御所(当時の皇太子の新居)として10年の歳月をかけて明治42年に建設されました。
鹿鳴館を設計したジョサイア・コンドルの弟子、片山東熊(かたやまとうくま)の総指揮の下に、当時の一流建築家や美術工芸家が総力を挙げて建設した、日本で唯一のネオバロック様式の西洋風宮殿建築。
室内装飾や部材発注のためにわざわざ欧州に職人を派遣し技術を習得させたり、東熊自身も海外に出向くほどの力の入れようでした。
ウィーンの王宮やルーブル宮殿に模された豪華な建物は、あまりに豪華すぎて昭和天皇や今上陛下が一時期お住まいになった以外、東宮御所としてあまり使用されることはなかったそうです。
昭和になって戦後、迎賓館として生まれ変わるために村野藤吾(むらのとうご)の設計で改修工事がされ、ヴェルサイユのグラン・トリアノン宮殿を参考に金箔や塗装、天井絵画なども修復されました。

この日参加したのは年に何回か着物でお出掛けする会で、毎回主催者が決めるドレスコードがあるのですが、この日は「訪問着」でした。
普段はかたい着物だし、訪問着はめったに着る機会がないので気分が上がります。
明るいグリーンの訪問着はうちのお客さまでもある「Salon de MICHIKA Collection」でいただきました
迎賓館らしく(?)老松の柄の袋帯です。
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草履は白のパールレリーフ。革加工の技術でトップクラス「山菱」の草履です。先々代より辻屋本店が絶対の信頼を置いています。
もったいなくてこれまで自分では履いたことがなかったのですが、売っていながらそれはよくないなーと思い、自分用に一足購入。
芯には最上級のコルクを使用し、空洞を施すことでさらに軽く仕上げているので、ものすごく軽くて履き心地良いです。
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迎賓館のお庭で皆さんと写真を撮るのに砂利の上をずいぶん歩いたので心配しましたが、底裏の素材も良いためまったく問題ありませんでした。
白の草履は着物の格に関係なく合わせられるので、一足お持ちになるとよいと思います。
結婚式や式典などでは、帯地や金彩の入った鼻緒や台のフォーマル草履がよりふさわしいと思いますが、
この日のようにお出掛けやパーティーなどでは白の草履で構いません。
つま先から少しのぞくパールレリーフの柄は光の加減で陰影が出て美しく、品良くコーディネートできると思います。

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by TomitaRie | 2018-04-05 15:33 | 下駄・草履・和装のこと | Comments(0)
桜の柄の着物
季節をまとう楽しみ、嬉しさは着物ならではのおしゃれ。
さらに、先取りするのがよろしいと言われています。

日本列島を桜前線が北上するこの季節、
桜の柄の着物や帯は、着てもよいのかどうなのか…。

桜の柄といっても、蕾だったり、満開の桜、花びらの柄などさまざまなので、
その時々で柄を選ぶと、先取り感が出ますね。
また手描き友禅の写実的な桜は季節感がありますが、
抽象的な型染めの桜でしたら、もう少し長く着ることができそうです。

私が締めている帯は、母の若い頃のものですから、60年は経っているはずです。

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白っぽい紬は、祖母の箪笥にあった着物で、とてもお気に入り。
茄子紺の八掛を付けているところ、祖母はおしゃれな人だったんだなと思います。
レトロな感じの組合せになったので、帯揚げには江戸紫を選びました。

そして、履物屋ならではのセレクト!
桜の樺細工の舟形下駄です。
これこそ季節限定ではなく一年中履けるのですが、桜の時期に履くとより嬉しい気分です♪
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by TomitaRie | 2018-04-01 14:14 | 下駄・草履・和装のこと | Comments(0)