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草履の修理
辻屋本店では自店の商品、他店の商品にかかわらず、可能な修理は受付けています。
鼻緒の交換、前坪の交換、底裏の剥がれ直しなどがあります。
思い出がある草履を大切にする気持ちにお応えしたい、そして挿げ職人の技があることを知っていただきたいと思うからこそ、
修理代金を低く設定しつつ、よそさまの草履も引き受けております。


先日も、大きなスーツケースいっぱいの草履を持ち込まれたお客様がいらっしゃいました。
踵の交換と、緩んだ鼻緒の調整です。
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このお客様は足が小さく、鼻緒をかなりきつく挿げるため、一足一足、鼻緒の「根留め」という作業をやり直さねばならず、新しい草履に鼻緒を挿げるよりも大変です。
他の場合でも、修理にはかなり手間と時間がかかることが多いのです。
かける時間と技術を考えれば、修理代はかなり良心的に設定しています。
面倒な作業をやってくれるうちの職人には、心からありがたく思います。


歩きやすい、疲れない草履というのは、草履の素材やデザインも影響しますが、ほとんどは「挿げかた」による部分が大きいのです。
挿げ職人はいまや絶滅危惧種といってもいいほど少なくなり、目の前で草履を挿げてもらったことがない人がほとんどと言っても過言ではない状況です。
それゆえ鼻緒を挿げる技術が評価されないのでしょう。
呉服屋さんのような着物のプロでも、最近は鼻緒を挿げなくてよいタイプの草履を履いているかたが多いのは、本当に残念なことです。


「痛くて履きづらいのは、草履のせいではなく、鼻緒の挿げかたのせいです。」
一日に何度も、お客様に説明しています。
一度でも辻屋本店で草履をお求めくださったお客さまは「辻屋さんの草履はほんとうに履きやすい」と言ってくださいます。
挿げかたは、各店によって違います。職人によってもそれぞれです。
草履の履き心地は、挿げる技のレベルによるわけです。
辻屋本店の職人は、創業より107年の歴史の中で、
代々受け継がれてきた高度な技術を持っていると自負しております。



写真の大量の修理を持ち込まれたお客さまは、この3倍くらい草履をお持ちとのことですが(笑)、
とても大切にされていることが草履を見るとわかります。履き終わったら乾拭きして、踵が減っているかチェックしてからしまっているそうです。
時々、ドロドロの草履を修理に持ってくるかたもいらっしゃいますが、せめて泥や汚れは落としてから持ってきていただけると、ありがたいです。

また草履はたいてい、台と鼻緒は同じ革で仕立ててあるので、元々付いていた鼻緒以外は合わない場合も少なくありません。
当店の在庫で、持ち込まれた台に似合う鼻緒があれば、もちろんその場ですぐに替えて差し上げるのですが、あれこれ合わせてみてもどうしても似合う鼻緒がない場合は、お断りすることもあります。
「鼻緒なんか、なんでもいいわよ、履けさえすれば。どうせ見えないんだから」というかたも時々いらっしゃいます。
そんなことは絶対にありません。
草履はコーディネートの重要なポイントです。
商売だけでいえば、台に似合わなくても適当な鼻緒を挿げれば修理代はいただけるのですが、うちで修理した草履がみっともない一足になるのはどうしても嫌なのです。


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by TomitaRie | 2018-08-21 16:33 | 下駄・草履・和装のこと | Comments(0)
立秋過ぎて
地元の大先輩方に昔のお話を聞くと、戦中戦後の思い出は必ず語られます。
亡き祖父母、伯父にも、もっと聞いておけばよかった。

東京大空襲の日、あたり一面焼け野原になり、
隅田川でもおおぜいの人々が亡くなったと聞きます。
一時期、中断していた「とうろう流し」が復活したのは、
今年、十三回忌を迎える母が亡くなった翌年でした。
当初は知る人も少なく、妹と二人、母をしのんでとうろうを流しました。

2年程前から知名度が上がり、今ではとうろうを手に長蛇の列ができるほど、
たくさんの人が集まるようになりました。
今年は琵琶奏者の友吉鶴心さんが平家物語をうたっていました。

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by TomitaRie | 2018-08-16 14:57 | 浅草 | Comments(0)
ZOZOSUITから着物について考えてみた
話題のZOZOSUIT、おもしろいなぁ。
「人が服に合わせる時代から、服が人に合わせる時代へ。」
がコンセプト。
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採寸用の計測スーツを着てスマホの前で360度回ると、専用アプリが計測スーツのマーカーを認識して、自分の体のサイズが自動的にスキャンされ、計測したデータで自分サイズの服をオーダーできるというもの。
現在の展開ではビジネススーツ、オックスフォードシャツ、デニムパンツ、Tシャツを作れるみたい。
うちの若手職人がキャンペーン期間中に試しに注文して、実際に採寸してみたそうです。自撮り用にスマホを立てるキットまで付いてくるとか。
ネットで調べると使い勝手について評価はさまざまのようですが、始まったばかりなので今後まだまだ進化していくのでしょうね。

洋服が立体的に裁断されているのに対し、着物は直線で裁断して直線に縫っています。
洋服はいろんなデザインがあるけれど、ボタンやファスナーの位置は決まっているし、ジャケットでもズボンでも体の形に合わせて作られているから、着方は1通りしかありません。
誰が着ても同じ着方になる。


一方、着物の形は基本的にすべて同じ。男女もほとんど変わらない。
体に合わせて作られていないので、着方は着る人の自由です。
衿の合わせ方、裾の長さ、おはしょりの出し方、帯の位置など、着る人の体型や好み、その日の気分など自由に着こなせます。
まさに「服が人に合わせる」のが着物。


私の母が若い頃は、洋服を自分で縫うことが珍しくなかったと聞きますが、その後大量生産の時代になると洋服は作るものから買うものになり、やがてグローバル企業によるファストファッションが台頭します。
その次にくるのがIT化による自分サイズの洋服だとしたら…。


洋服とは真逆の着物が、別の視点から見直されてもおかしくないのでは?と思いました。
着物は「着方が難しい」「面倒くさい」「窮屈で疲れる」などの印象が根強いようですが、体に巻き付けて紐を締めるだけなのだから、何も難しいことはないのです。
私は毎日着ているせいか、洋服よりコーディネートがずっと易しいと思う。
アクセサリーも要らないし。
ゆったりでもきっちりでも、好きなように着られるのだから、洋服よりよほどラク。
着物に対する思い込みを手放せば、むしろ体にとても快適なのが着物であると思います。


ZOZOSUITは靴用に足の採寸もできるよう研究中ということです(もうできたのかな?)。
足全体を覆う構造である靴と違い、下駄や草履など和装履物は鼻緒だけで足にフィットさせます。
つまり着物と同じく、鼻緒の挿げかたで、どんな形の足にも自由に合わせられるのです。
逆に言えば、履き心地という点では鼻緒の挿げかたがもっとも重要ということ。
洋服と同じく靴は自分の足に合う一足を探さなければなりませんが、履物は自分の足に合うように鼻緒を自由に調整できる。
洋服と着物、靴と履物。
こうして比較してみると、180度視点が違うのがひじょうにおもしろいと思いませんか。


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by TomitaRie | 2018-08-08 18:06 | 下駄・草履・和装のこと | Comments(0)