お茶は20代の頃に10年程、地元のお教室へ通っておりましたが、たいして身に付かず、30代になると仕事が忙しくなり辞めてしまいました。 40代の頃、夫の仕事で暮らした福岡で尊敬する師に出会い再開、東京へ戻るまで3年程お稽古に通いました。 家業を継いでからしばらくは余裕がなく、ようやくここ最近、また始めたいなと考えていたところ、ちょうど友人が自分でお教室を持つことになったので、教えていただくことに。 私はお勤めの人たちよりずっと休みが少ないため、お稽古も月一回が精いっぱいで、毎回教わったことがすーっと抜けてしまう情けない生徒ですが… 昨日、連休唯一のオフ日は社中のお稽古茶会へ。 羽根木公園の小間茶室は緑の木々の中にあって大変静か。 いつもは賑やかな観光地でバタバタ動いているので、こうした非日常は大切なひとときです。 お茶を再開したのは、仕事にも役立つと思うから。 「お茶を習い始めたので、お稽古やお茶会に草履が必要になった」というお客様も少なくなく、やはりその世界に近い方が気持ちが理解できるように感じます。 お茶会といっても格式のあるなし、大寄せだったり少人数だったり、いろんな場面があります。 女性だけでなく男性も、そのときにお召しになる着物は何かお聞きして、お履物のご相談に乗ります。 はじめて草履をお求めになる方には、男性は畳表の雪駄で黒か紺の印伝もしくは正絹の鼻緒。 女性は白、クリーム色、ピンクなど淡い無地の革草履で、鼻緒は台と同素材、または帯地など織りのものををおすすめします。 今教えていただいている先生は、ご自宅で教室を開くまでの間、区の公共施設を借りてお稽古しているので、いつもキャリーバッグにお道具を詰めて持ち歩いているため、草履は底裏が滑らない素材で歩きやすいもの。
また雨の日のお茶事に備えて雨草履もご愛用くださっているようです。 どちらもうちでお求めいただいてますが、先生のようにヘビーユーザーの方こそ、鼻緒を調整したり踵を交換するなどメンテナンスができる「本物の草履」を履いていただきたいと思います。 #
by TomitaRie
| 2019-05-04 17:01
| 下駄・草履・和装のこと
一昨日のブログでも書きましたが、平成は多様化の時代と言われる一方で、 世界的にグローバル化が進み、貧富の差が問題になっています 環境破壊はもはや危機的状況です。 そんな中で叫ばれているのが「持続可能な開発目標(SDGs)」。 2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までの国際目標です。 持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、 地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。 SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)な ものです。 「発展途上国支援や環境保護のボランティアの話でしょ」と考えている人が 多いのですが、実はあなたや私も「奪われている」当事者なのだということ。 たとえば浅草。 ふと見回すと何代も続いていたお店が廃業し、後にはコンビニやチェーンの ドラッグストアが入る。そんな光景があっちでもこっちでも見られます。 レトロな雰囲気とおいしいケーキでファンの多かった「アンジェラス」や、 昔ながらの手焼きの固いお煎餅が特徴の「入山せんべい」も閉店してしまいました。 家族経営の個人店がどんどんなくなり、居酒屋も回転寿司も全国チェーンの店ばかりに なってゆく…。 浅草は個性的でおもしろい店がいろいろあって、それが目的で遠くからお客様も やってくるし、テレビや雑誌でも取材されています。 なのに、この街はいま逆方向へ進んでいて、私はすごく危機感を持っているのです。 日本は中小零細企業が頑張っているとはいいますが、今の税制などからわかるように、 大企業や全国企業を優遇する方向なのは明らかです。 では本当に、日本中が全国企業/多国籍企業になり、日本人がみんなそこで雇われる ようになったほうが幸せなのでしょうか。 街から多様性が消えること、それはSDGsが目指す世界とは逆です。 世界中から人々が訪れる浅草こそ、そうなってはいけないと思うのです。 個人経営の店では商品も少し高くなるかもしれない。 注文しても時間がかかるかもしれない。 働く人たちにとって、労働環境は大企業より劣るかもしれない。 それでもチェーン店にない魅力があって、「好きだから」来てもらえるお店があり、 そんなお店を営むことを楽しんでいるオーナーがいる。 私は浅草がこれから先も多様性の街であって欲しいと願ってやみません。 辻屋本店では、職人が目の前で鼻緒を挿げてお客様に履いていただく商売を創業から 変わらず続けています。 大企業がつくる大量生産品とは正反対で、扱っている商品は、台も鼻緒も国内で つくられ、すべて職人の手仕事です。 これからも私たちは、使い捨てではなく、メンテナンスや修理しながら長く使って いただける履物を皆さんにお届けしたいですし、私たちの商売もSDGsに つながるのではないかと考えております。 #
by TomitaRie
| 2019-04-29 13:24
浪曲師、玉川奈々福さんが伊丹十三賞を受賞され、その贈呈式へお祝いにうかがいました。 伊丹十三賞とは… 受賞対象:伊丹十三が才能を発揮した分野において、優秀な実績をあげた人に贈る(エッセイ、ノンフィクション、翻訳、編集、料理、映画、テレビ番組、CM、俳優、イラストレーション、デザインなど) 選考委員:周防正行 中村好文 平松洋子 南伸坊 今や各メディアにも引っ張りだこの奈々福さん。 これまでの地道な活動が認められて、ついにこんな名誉な賞まで! 会場に駆け付けた奈々福応援団の皆さんともご一緒できて、嬉しいひとときを過ごさせていただきました。お三味線のレジェンド、沢村豊子師匠もとっても嬉しそうでした。 奈々福さんのお召し物は、浅草の呉服店「ほてい屋」でお誂えされたもの。 お草履は辻屋本店。晴れの舞台に履いていただき感激です♪ 豊子師匠の履いていらっしゃるお草履も辻屋本店です。 先日、お弟子さんの美舟ちゃんがプレゼントにお買い求めくださったもの。 奈々福さん、本当によかった! 主催者の宮本信子さん、当たり前ですけど美しくて、気さくに撮影にも応じてくださって感動いたしました! #
by TomitaRie
| 2019-04-27 13:37
| 伝統芸能
新元号・令和に切り替わるまで、10日を切りました。 次の御代への期待や希望、不安が入り交じりながら、 世の中はさらに大きく変わろうとしているのを感じます。 平成は多様性が進んだ時代といわれます。 人種や宗教、ジェンダーなどさまざまな領域で、昭和までの価値観が揺らぎ、 それまでの秩序が変化していく過程だったのでしょうか。 東京オリンピックを来年に控え、日本にはおそらく有史以来の大勢の外国人が訪れています。
有名観光地、浅草も例外でなく、日々世界中からあらゆる人種のお客様がやって来ます。 辻屋本店は飲食店などに比べれば、さほど多くはありませんが、 それでも遠い国からのお客様が毎日のようにみえます。 こんな状況を見て、ご先祖様はあの世でさぞびっくりしているんだろうなぁ。 でも浅草という街はずっと昔から、異質なものを排除せず受け入れる街だったのではないかという気がします。 江戸時代から近代まで娯楽の中心だった浅草には、遊びに来る人々だけでなく、 地方から働きに来たり、どこかから流れてついたり、身分も職業も言葉も違う人々が 常に出たり入ったりしている土地なのではないかしら。 古いものも新しいものもいっしょくたになって、混沌とした、なんでもありの、懐の深い街。 そこがこの街の魅力なんだと思うし、個性のない、きれいでおしゃれなだけの街には なって欲しくない。 昨日、浅草・木馬館で「一見劇団」の舞台に、 仲良くさせていただいている舞踊家、宗山流胡蝶さんがゲスト出演されたので、 久々に大衆演劇を観てきました。 お世辞にも洗練されているとはいえない、でもエネルギーがあふれていて、 観客と役者の距離がものすごく近い。 小さなステージで、ギラギラした照明、歌謡曲や演歌に合わせて振りをする、 どぎついメイクと衣裳の役者たち。 昼の部と夜の部、それぞれ3時間以上、お芝居あり舞踊ショーあり。 それで木戸銭は1600円! 難しい台詞もないし、専門知識がなくても楽しめるし、裕福でないお年寄りでも 年金をやりくりして観に行ける。 まさに大衆のための芸能。 踊っていた役者が舞台の端で体をかがませると、客席からファンがさっと駆け寄り、 一万円札を数枚扇状に開いた状態で役者の胸元にクリップで留める。 そんな情景が何度も繰り返される。 初めて観たときはかなりの衝撃でした。 我が国には、古今東西のさまざまな芸能があります。 一方でお能のような無駄をそぎ落とした芸能もあれば、一方で大衆演劇のような猥雑な芸能もある。 どちらが偉いとか、価値があるとかではなく、両方あるからよいのです。 胡蝶さんは実力も芸歴もあり、大きな舞台もたくさんこなす日本舞踊家ですが、 昨日の小さな舞台の上で、とても楽しそうに演じていらっしゃいました。 「あーこの人は、お寺を継がないでもお経をあげないでも、 こうやってみんなを幸せな心持ちにすることができるんだなぁ」と思いました。 さらにジェンダーも自分にとって自然な状態に替えてしまった、 ある意味、多様性の時代に象徴的な人なのかもしれないです。 さてこの日の私は、補助席になっても大丈夫なようにデニム着物で。 帯はだいぶ前に祖母の箪笥で見つけていらい出番がなかったもの。 ふと取り出して締めてみたら、レトロで意外とかわいい。 木綿やデニムの時は小物で遊びます。 ウッドビーズ作家のユミさんの半衿と、薄紫の矢絣の足袋に右近下駄。 #
by TomitaRie
| 2019-04-22 16:36
| 浅草
時々、着物好きの仲間で集まるお遊びの会。 参加者は毎回テーマに沿ってのコーディネートを考えて臨みます。
皆さんが選んだのは日本映画だけではありません。 この方は「風と共に去りぬ」のヴィヴィアン・リー。 グリーン系の着物と帯、趣味で作っている帽子からアンティークをお持ちになり、 西部劇好きなこの方は「夕陽のガンマン」クリント・イーストウッド! 荒野をイメージした茶系の着物。
この方はアパレル系の会社を経営されていて、ジェームス・ディーンといえばデニム着物。 茶の湯でいえば「見立て」でしょうか。 私のテーマはマルセル・カルネ監督「天井桟敷の人々」。 低めの段重ねです。 「春の装い」はどうしようかと悩み、白大島に合わせても邪魔にならない桜の刺繍の半襟をつけました。 「天井桟敷の人々」は映画そのものというより、浅草・千束にあった「ガランス」というカフェへのオマージュ。 中学生の頃から度々遊びに行っては、名物のチーズケーキをいただき、 お店の猫たちと遊びながらマダムの話を聞くのが大好きでした。 「ガランス」のマダムは、フランス映画とオペラをこよなく愛していて、 世界的にも有名なマエストロが演奏会で来日すると必ず会いに行き、よくお手紙を書いていました。 それほどフランス語が堪能なのに、フランスに一度も行ったことがないと言ってました。 若い頃、唐十郎の状況劇場と交流があったらしく、当時のアングラ演劇の話をよく聞いたものです。 画家の金子國義、人形作家の四谷シモン、作家の澁澤龍彦、舞踏家の麿赤兒など、
当時のキラキラした交友関係の物語に、私はいつも心ときめかせておりました。 金子國義先生の個展をお手伝いさせていただいたこともあります。 先生のお姉さまはいつも、ものすごく素敵な着物姿でした。 その頃より多少人生経験も積んだ今だったら、マダムの話はもっともっと面白かっただろうにと思います。 #
by TomitaRie
| 2019-03-29 14:53
| 下駄・草履・和装のこと
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浅草辻屋本店 下駄屋.jp
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